天使のワケマエ

避暑地で有名な
山梨県南アルプスの麓
ウィスキー工場がある

深い森林に囲まれ
変化にとんだ気候
花崗岩に磨かれた水
探し求めた条件に
適しているようだ

ウィスキーは樽に詰められ
数年以上寝かされる

そのあいだ
ブレンダーの免許皆伝を得るため
樽の壁にぶち当たりながら
長いときをかけて
修業を繰り返し
熟成を重ねていく

無色透明だった液体は
森林の天使たちによって
琥珀色へと変えられる
1年に2%ずつ
ワケマエを献上しながら

自然界のなかで
生きとし生けるもの
すべてのものは
水によって命が与えられている
万物の根源は水である

その水は
定期的に天に召し上げられ
再び雨となって舞い降りる

ひとも自然界のなかで
1日に2リットルずつ
体の外に放出していく
ひとは琥珀色にはならないが
年輪を重ねるごとに味がでてくる

天使たちよ
味わい深い生活を送れるように
大いなる力をお貸しくだされ