夏の日の想い出

甲子園が閉幕して

小学生たちの夏休みも

エンディングを迎えようとしている

 

楽しかった夏休み

じいちゃんと

自転車で並んで向かう

山のなかには

家庭菜園が広がっていた

自転車の後ろには

家の蛇口から水を満タンにいれた

ポリタンクがくくりつけられている

 

畑の近くの木陰に自転車を泊める

スタンドを下げて、ふと一息

じいちゃんの野球帽から

汗が吹き出している

 

自転車から紐をほどき

ポリタンクを重そうに下ろす

僕もそれを手伝う

ポリタンクの白いキャップをひねり

中をのぞく

外から光に照らされた水たちが

ふらふらと踊っている

とてもおいしそうだ

 

ジョウロに水を移し

野菜たちに降りかける

葉に滴たる水滴が

キラリと地面に落ちる

下にはアリたちが

行進してどこかに向かっている

 山育ちのアリはデカい

横からハサミの音がする

じいちゃんが茄子を採っている

僕の横にはキュウリがぶら下がっている

じいちゃんを呼ぶ

じいちゃん、じいちゃん

大きいキャウリがあったよ

ハサミでパチンと切り落とす

青々としたキャウリが採れた

こうするとイイんだよと

キャウリを縦に持って

上下に振った

見よう見まねで

僕も採っては振るの繰り返し

 

その日は大漁だった

いまは無くなった

スーパーセヌマのビニール袋に

野菜がぎっしり入れられている

 

クーラーが効いた

じいちゃん家で一休み

僕はタタミの上で大の字で寝転ぶ

じいちゃんはまだ

庭の水道で畑の土を落としている

 

寝転ぶ僕の前に

ばあちゃんが現れた

冷えたモモを切ってくれた

速攻で食べて満足満足

 

じいちゃんが戻ってきた

じいちゃんは

味噌を端に持った皿に

縦に切ったキュウリを

持ってきた

 

夏の日のだんらん

楽しかった少年時代の想い出が

頭の中のスクリーンに映し出されている

 

あの時のキュウリは

もう

食べられない