認証

最近は

どんなところに入るにしても

認証を通過してから入る

 

ひと昔前では開けっ放しだった

会社の玄関

大学のキャンパス

 

あらゆるところが

会員制スペースのように

閉ざされている

 

なんとか証のオンパレード

 

セキュリティが強化されて

安全になっているのだが

果たして

良い世の中なのだろうか

 

閉鎖的で内向きで

多様性が失われてしまっているような

 

認証を通過するために

いろんなものが

削ぎ落とされてはいないだろうか

 

 

証とは

言っていることが正しいと書く

 

正しいとはどうやって判断するのか

何を基準にしているのだろうか

 

表面上

着飾ろうとすれば

いくらでも編集ができる

 

答えがひとつならば

それを覚えてしまえば良いのか

 

コンプライアンスという言葉で

不正をあぶり出し

不正を排除すれば

万事うまく行く

 

そんな風潮が漂っている

 

窮屈で収縮している日本

どこへ向かっているのだろうか

 

昔は

かなり大らかだったのではないか

 

規制をしている世代の人々が

学生の頃はどうだったのか

 

認証なんてシステムはなく

それぞれが

最低限のルールを守って

秩序を保ってきた

 

特に学生には寛容だったと聞く

 

真面目ひと筋の僕の親父でさえ

バカをやって楽しかったと話していた

 

昼間から

タバコはぷかぷかしながら

酒を浴びる程飲むし

 

酔っ払えば

噴水にだって飛び込む

 

近くの酔っぱらいとは喧嘩もするし

眠くなれば道ばたにだって寝る

 

授業だって

代理出席が日常茶飯事

 

今だったら

なんとか偽装で問題になりそうだ

 

その前に

最近の出席票は

スマホのパスワード認証方式だそうだ

 

出席率はすこぶる高いらしい

 

このシステムを普及させた大人たちは

どんな学生時代を送っていたのだろうか

 

胸に手を当てて思い出して欲しい

 

おそらく

遊び呆けていたに違いない

 

豊かな発想、とっぴな発想は

ちょっとレールの外にある

遊び心から生まれるものだ

 

学問を学ぶ過程で

長い時間をかけて伝わった

解読できないような暗号に出くわす

 

方程式の変形が

いったいどうやったら

次の行に成るのか見当がつかない

 

そんなとき

周りの仲間と試行錯誤しながら

行間を読もうとする

 

ときには

どうしてもわからないときは

クラスに何人かいる

賢人に頼るのだった

 

賢人のレポートが出回り

朝まで遊んでいた連中が

直前まで書き写している

 

こうした経験が

社会に出たときの基礎を作る

 

 

一生懸命やったって

 

教科書通りには

変形できないモノがたくさんある

 

わからないものはわからない

 

きちんと管理された

答えがひとつしかない

認証の世界とは

対極の世界

 

レールの外の世界

 

そんな世界に足を踏み入れたとき

行間に隠された宝物が見つかるかもしれない

 

 

レールの外から入ってきても

認証を通してくれる

懐の広い世界であって欲しいものだ