信頼と不信

あるカフェのオーナーはこう言った

なんか新品はカッコ悪い
新人みたいに青臭いから
だから
あえて、古いものを使う
長年続いてきたからこそ
信頼できる感じがあるでしょう


ひとは自分のモノサシで物事を判断する
行き先が自分の視野に入っていないと
不安になる
だから
ひとは内向きになる傾向が強い

社会への扉を開き
ハジメのイッポを踏み出すとき
ひとに信じられ、ひとから頼られる
そんなひとになるために
真新しい服を着て
青白く頼りない顔で歩きはじめる

それから長い行商が続く
苦難を乗り越えながら
だんだんと
頼もしい商人になっていく
ベテランともなると
こんな声をかけられる
よっ、だんなさん
色がお黒くなりましたね、と

まっくろに日焼けした顔は
商売がうまくいっている証であり
信頼してモノを買えるよ
褒めコトバなのだ

だが
一度でも不信感を与えてしまうと
なかなか取り戻すことができない

まっくろに日焼けするためには
徐々に焼き重ねていくが
一気にまっしろに戻すことはできない

だからこそ
不信の恐怖を乗り越え
長く使われているモノには
信頼感があり
人びとを引き付ける
チカラを持っている

ビンテージものには
新品には無い
熟成された渋みがある
そんなオトナになれるだろうか